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第30回

「本堂さんありがとう」

本堂さんが、平成23年1月、70歳を機に引退すると挨拶に来てくれました
。彼は製パン工場(現 江南工場)の工場長として永年勤めて下さったあと、工場で後輩の応援をしてくれていました。先日も工場の人達が50人集まって送別会をしたと聞いていましたが、彼の人柄の良さが、皆を引き寄せたのでしょう。
私も若い時に製パン部長をしていましたので、朝早くから深夜までパンやドーナツを作ってくれたこと、クリスマスケーキ作りに何日も徹夜作業をしてくれたこと等いろいろ思い出し感慨深いものがありました。

彼は北海道酪農学園短期大学の出身ですが、この温暖な中部地方に住んでよかったと言ってくれました。体の具合はどうかと訊ねましたら、殆ど肉も食べないし、アイスクリームも口にしないから、全く健康とのことでした。白内障はと聞きましたが、この点も全然問題なしとのことでした。

少しゆっくりしてから、近くで今建設中の施設で、ボランティアとしてパン作りを教えて、社会にお返しをしたいと言っていました。50年近くの間には多くの製造卸パン工場が新工場を作りながら成長し、その後は競争に耐えられず消えていきました。本堂さんはこの有様を、パン作りの世界に身を置き見続けてきたことと思います。
その彼が布袋食糧にいて本当に悔いはなかったと言い切ってくれました。私にとってこんな嬉しい言葉はありません。
どうか、いつまでも元気で良いパンを伝承していってください。