第41回
「1989年生まれ」
今年の新入社員は1989年即ち平成元年生まれです。この年に日経平均株価は38,000円で最高値をつけました。
そして、その後傾向としては下降を辿り、今では10,000円です。その時私は社長になって15年目であり、14歳年上の叔父が会長でした。毎日、会社のこと、業界のこと、日本経済のこと、株式市場のこと等を話題にして語り合っていたことが懐かしく思い出されます。当時の雑誌などには、5万円いや7万円に向かうと書かれていました。その頃、評論家の安田二郎さんはそれはおかしいと何回もコラムに書いておられ、会長も私も同じ意見でしたが、訳もなく上昇してゆくのでした。後から考えるとバブルであったのです。土地もゴルフ会員券も同じことが発生したのです。その時の空気に流されてしまうものです。人間とは哀れなものです。新自由主義ももてはやされ始めていました。これはおかしいと云われながらも今まだ続いています。
その意味では時代の空気の恐ろしさを感じます。1931年満州事変から1945年の第二次世界大戦の終わりまで15年間日本がやってきた戦争は何であったのでしょうか。人間はとんでもない間違い犯し続けるものでしょうか。
会長と私とは、過当競争を止めなければ中小企業は協同・協調しなければという点では同じ意見でした。しかし、会長は金<キン>が大切、株式は利食いすべきと主張し、私は金<キン>より通貨、株式は利回りの良いものは保有すべきと思っていました。また、会長は私に株式の売買はするなと云っておりました。確かに売買差だけで利益を追うのではなく、商品やサービスなど仕事を通して世の中に役立ち、そのご褒美に利益をいただくのが正しいあり方だと今も思っています。その叔父も1990年には逝ってしまいました。私は叔父の影響を受け、怖くない平等主義を心ひそかに信奉しておりましたが、一所懸命に働いても、のんびりやっても同じ報酬なら一般的にはあまり働かなくなるのが普通のようです。単なる平等主義ではいけないと思うようになりました。経済とは人が幸せになる為のものの筈ですが、いつのまにか、お金を最大化することが、多くの人の目標になってしまい、本当の幸せから離れていくような気もします。株式は面白いし、怖いし、気味の悪いものです。今年の新入社員に向き合いながら、20余年流れを噛みしめています。