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第16回

「熏習」

薬師寺管長の山田法胤師がNHKのこころの時代で話しておられた、「くんじゅう」という言葉はまことに印象的でした。
先人の良き流れ、教えを次世代にどのように伝えるかというくだりであったと思います。
物に香が移り沁むように、あるものが習慣的に働きかけることにより、他のものに影響・作用を植えつけることという仏教用語ですが、実に良い言葉です。

半世紀を超えて修行され、よき先師と共に起居された師ゆえの重みのある言葉でした。
よく子は親の背を見て育つとか 云いますし、良い社風に染まるとか 云いますが、熏習という言葉があてはまります。家庭においては祖父母、父母の役割、会社ならばリーダー、先輩の言動・行動が重要であります。日本においては何事も繰り返し繰り返し行われ「道」の域に達すると考えられていますが、これも先達の熏習といえるのではないでしょうか。

山田法胤師は岐阜県出身で中学3年でお寺に入り、お寺から大学へそして今70歳とのことです。
橋本凝胤師に仕え、高田好胤師は兄弟子であり、よく面倒をみて貰っていたと懐かしそうに述べておられました。
凝胤師にはいつも怒られており、何故怒られているか判らない時もあったようです。
しかし、今思い返すと良く育てて下さったという気持が一杯とのことです。熏習という言葉が最もふさわしいのでしょう。