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第3回

「カナダの小麦」

バンクーバーからロッキー山脈を越えると、東に向かって大平原が続く。
アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州、いわゆる平原3州といわれる穀倉地帯である。
カナダの人口は3200万人であるが、小麦の生産は自国消費量をはるかに超える2千数百万トンを生産しており、世界有数の小麦輸出国となっている。
日本は主にパン用小麦として、毎年100万トンを輸入しているが、北海道よりも緯度の高い、この北の地域の、特に春播き小麦は蛋白質が高く硝子質に富む、食パン用に最適なものである。

カナダは小麦の生産・輸出には国策のように力を注いできた。
食料用小麦を一元的に販売するカナダ小麦局(職員500人)、品質・数量検査を行うカナダ穀物管理局(職員700人)、そしてカナダ小麦の輸入国のユーザーを教育するカナダ国際穀物研究所(職員30人)の3つの組織が一体となって、効果的に活動している。
しかし、国と農家、農協の組織がしっかり組み合わさっていたものが、自由化、大規模化の流れのうちに少しずつ変質させられているように思える。

このほかに育種などは純政府機関で研究されているが、これはカナダ小麦産業の大きな支えであろう。しかし、カナダ小麦局が半官半民となり、農家は大型機械 の更新におされ一層大規模な耕作へと進んだ結果農家数は減少し、かつての農協組織による農家主導の集荷・出荷を行う大型エレベーター事業などは、穀物会社 へ吸収されていきつつあるようだ。

カナダの小麦は天候のせいで何年かに一度大減産になる、今年も99年のような動きで、しかも100年来の冷夏と言われ量的にはともかく質の点では厳しい見通しを持つ人が多い。

ヨーロッパの昨年の酷暑、一転今年の冷夏、どうも世界的に気象が激変しているようである。人間の活動はもっと自然に添ったものが良いのではないだろうか。 カルガリーから小麦のメッカ、ウィニペッグへ向かう機上から見える多分サスカチュアンの畑であろうが、灌漑によって土壌から浸み出たミネラルが、白い塩の 輪となって現れている。痛ましい気がする。

30万カナダドルの大型コンバインは11メートル幅で刈り取りと脱穀を同時に行う、空調され た快適な運転席の中は静かで、コンピューターには現在の反収量まで表示されている。確かに労働生産性は高いが、一方的に化石燃料を消費してゆくだけのこの 方法は長い目で見たらどういうことになるのだろう。資源枯渇は間違いない。大気汚染、気象異常に加担しているかもしれない。

カナダの人 は言う、小麦では安くて利益が上がらない、兼業の畜産でしのいでいるのだと。もっと高い値段で小麦を買って欲しいようだが、もっと安くしたらもっと買って くれるだろうかとも尋ねてくる。小麦農家の人の多くは、もともと小麦に愛着を感じ、小麦作りに生き甲斐を感じていたはずだが、いつの間にか関心の殆どがお 金に移ってしまったのだろうか。
小麦を生命のもとと考え、もっと大切に育み、もっと大事に扱わねばと思う。

石油とその加工品 に頼る農業の遠い将来には夢がない。太陽エネルギー、植物の力を活かし、よい土づくりを基にした農法がもっと研究される必要がある。たい肥、土づくりが しっかり出来て、農薬の要らない元気な農産物ができたなら、それは人の身体にも極めて有益なものとなるだろう。耕作機械の燃料も、植物から採られたアル コールを使うことが出来れば、全て循環型の農業が実現できる。

カナダ政府には、本来業務の片手間にオーガニック小麦の育種に取り組んでいる研究者が一人おられるが、もっと本格的にオーガニック農法全体の開発がされたら良いと思う。
きっと新しい素晴らしい世界が開けることであろう。

(2004/09/30)